第139回 退職が決定している採用担当者は、どう振る舞うのが正解か。

ある企業の採用担当者さんと大学で授業を行いました。その方はキラキラした目で楽しそうに自社の魅力を学生へ伝えていました。
表情や声色から会社への愛や想いが伝わる見事なプレゼンテーションで、参加していた学生も心惹かれた様子で受講していました。

ガイダンスの帰り道、「見事なプレゼンでしたね。会社のことが心から好きじゃないとあんな素敵なプレゼンはできないですよね」と私が伝えると「いや、私会社のこと嫌いで、再来月に退職するんです」と言うのです。そこから話題は会社の悪口で埋め尽くされました。

この話を聞いて、あなたはどう感じましたか?私の周りの反応は完全に二つに分かれました。
一つは、「怖っ」「人間不信になるわ」「学生騙してるやん」といったネガティブな反応でした。もう一つは「さすがプロやね」「会社の代表として参加してる以上それが当然」といったポジティブな反応でした。
この担当者さんは後者の気持ちだったのでしょう。会社の代表として責任感を持って挑んだプロと言えます。

一方で学生の立場で考えてみましょう。学生が会社を選ぶ理由の一つに「採用担当者の魅力」があります。
その担当者に惹かれて入社を決めた学生は、入社後「あれ?〇〇さんは?え?辞めた!?〇〇さんに憧れてこの会社に決めたのに…」と悲しい気持ちになるでしょう。
この問いに対する私の意見は、「この会社で幸せになれる人はどんな人か?その人にとってこの会社の良いところはどこか?」と、自分軸から外して自社の魅力を探すことです。

自分は何かしらの不満があって辞めるとしても、この会社に合っている人、幸せになれる人はいるはずです。
その人に向けて「当社はこんなビジョンや価値観で、こんな人が働いています。こんなタイプの方にはピッタリです」と、自分とは切り離して自社の魅力を再考し発信するのがベストだと考えます。
嘘をつくことも自分の感情を押し殺すこともなく、会社の代表としての役割や責任を全うできると思います。