第20回 ハロワ!


ハロワ! 久保寺 健彦

28歳の嘱託新米社員がハローワークの相談員として働き、そこで繰り広げられるさまざまなドラマが描かれた小説。

丁寧に求職者の身上話を聞くあまり、常連客に囲まれる日々が続く主人公の沢田。上司からは、「リピーターを作るな。リピーターがいるということは、就職が決まっていない証拠だ」と怒られます。美容師やキャバ嬢なら指名リピーターは喜ばしいことですが、ハローワークの相談員は、リピーターを喜んではいけないそうです。

ハローワークも一人ひとりの求職者に親身になるよりも、“どれだけ就職率をあげたか”が大切であり、数字に追われる毎日を過ごし、数字で評価が決まるようです。私の知り合いの方にも、ハローワークの相談員として勤務されている方がいらっしゃいます。その方は、民間の人材会社の数字至上主義に嫌気をさしてハローワークに転職をしましたが、この小説のように結局は民間企業と同じだとおっしゃっていました。

この葛藤は、この業界で働くすべての人にあるのかもしれません。読みやすい文体で、“ハロワ“の裏側が知れる冬休みにお薦めの一冊です。