第34回 何者


何者 朝井 リョウ

第148回直木賞に選ばれた作品「何者」。
著者の朝井リョウ氏は23歳で最年少受賞です。主役は就活生。23歳の著者だからこそ書けるリアルな内容で、現在の就活生が何を考え、何を求めているのか、どんな気持ちで生きているのか、とても参考になりました。

物語は、意識が高いと言われる男女5名の就活生を中心に描かれます。「学生団体の立ち上げ」、「海外ボランティアへの参加」、「自作の名刺を人事担当者に配りまくる」など、彼らは、就活に有利になると言われることはとりあえず何でもやります。FacebookやTwitterなどのSNSを駆使している点も現在の就活をうまく表現しています。

5名は就活仲間ですが、有名企業から内定の出た学生を妬んだり、仲間より先に内定が出たことで優越感を感じたり、第一志望の企業に落ちたとき、仲間は励ましてくれるけど、「心の中では笑っているんだろ」と疑心暗鬼になったり。そんな就活を通じて、「自分は何者か」を自問自答し、成長していく大学生が描かれています。

現在の就活の問題点や本当の友情とは何かも考えさせられる一冊です。前回ご紹介した「就職戦線異状なし」と読み比べてみると、時代の変化が一目瞭然です。セットで読むのも楽しいですよ。