第39回 ブラック企業叩きが行き過ぎると、ベンチャー企業が育たなくなる

各党の参院選公約に盛り込まれるかどうかで話題となったブラック企業の社名公表。求職者にとってはありがたい指標であると思いますが、ブラック企業の線引が曖昧なまま、公表された企業はたまったもんではなく、今後の採用活動に大きく影響があるのではないかと感じています。

あきらかに違法な商売をしている企業などは論外ですが、長時間労働や離職率など、ベンチャー企業ならある程度仕方のないことなども取り上げ、叩き、潰そうとする今の風潮は、日本の成長において良くないのではないかと危惧しています。長時間労働や高い離職率をブラック企業とするなら出版社やテレビ局などはブラック企業の典型になってしまいますし、日本の全てのベンチャー企業がブラック企業になってしまいます。

ソニーやパナソニック、ホンダのような、今や世界を代表する大企業も、創業当時に従業員の方が、寝る間も惜しんで働いたからこそ、今があるのです。京セラの創業者稲盛さんも、人が寝ている間も働き、誰にも負けない努力をすることの大切さを説いています。弱者の戦略、ランチェスター戦略でも、弱者が勝つには、時間総量が競争相手より上回っていることが一番大切だと言われています。サイバーエージェントの社長の藤田氏も創業時は週110時間休みなく働き続けた結果、史上最年少で上場企業の社長になれたのです。

これらの企業を叩き潰していれば、未来の大企業が生まれにくい日本になってしまいます。また、最近とくにブラック企業と同時に出てくる言葉が「ヤリガイ搾取」です。ヤリガイ搾取とは、ヤリガイを餌に社員を長時間働かせることに対する批判です。しかし、本人がヤリガイを感じていて、「しんどいけど楽しい」と思っているのなら、それはそれで素晴らしいことで、外野の評論家がとやかく言うことではありません。

2009年に公開された小池徹平君主演の映画「ブラック会社に努めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」でも、主人公は、劣悪な労働環境で働いていましたが、その中でも小さな成功体験や仕事を通じて社会に繋がっていく充実感を感じ、ブラック企業で大変なことも多いなか、それでも頑張ってその会社に勤めていました。

“夢はあるけど体力のない”。そんな行き過ぎたベンチャー企業叩きは個人的にあまり好きになれません。