第49回 残業代ゼロ法案に賛否が別れる

沢村一樹主演のテレビドラマ「ブラック・プレジデント」がリアルだと社内で話題になっています。主役であるブラック企業の社長が、社員に対する要求が強すぎて、従業員はサービス残業を繰り返すことになり会社は訴えられました。

社長は弁護士に対して「チンタラ仕事をしている奴が金を稼ぐのはおかしい!」「必ずしも労働時間と生産性は比例しない」「人間の成長にはある程度の負荷は必要だ」「あなたのような弁護士がブラック企業から若者を守るとか言って、日本の労働市場の流動化を阻害し、日本の競争力を弱めている」 「社員を甘やかして競争に負けて会社が潰れたら社員全員が失業者だ」と反論します。

中には過激な発言もありますが、すべてが間違っているとも思えない内容です。確かに、同じ仕事でも1時間で終了する人と、3時間かかる人もいます。1時間で終了する人は残業が発生せず残業代がゼロで、3時間かかってしまう人が2時間分の残業代が出て多く稼ぐ仕組みは矛盾を感じます。

また、今企業は世界と戦わなければいけない時代です。国際競争に勝つためには社員自身が成長しないといけませんが、楽な仕事をしていては成長のスピードが遅くなります。社長の言うように、人が成長するためには、ある程度の負荷は必要になってきます。

「はりまっち便りNo.39」でも書きましたがブラック企業叩きが行き過ぎると、ベンチャー企業が育たなくなり日本の企業の競争力が弱まってしまう可能性があります。

そして最近、安倍総理が議長を務める産業競争力会議で、報酬を労働時間に対してではなく、労働の「成果」に対して払うことを可能にする制度改正を検討し始めました。第一次安倍政権下で議論されて立ち消えとなった「ホワイトカラー・エグゼンプション」の拡大版とも言われています。ブラック企業叩きが盛んなこの時代に、この法案の議論は支持率低下のリスクもあります。

既に一部の新聞や評論家は「長時間労働を助長する」などと、繰り返し批判をしていますし、ネットでも軽い炎上がおきています。それでもこの法案を議論するのは、日本の国際競争力を高めたいという安部総理の強い思いがあるからでしょう。生産性を高め、残業をしなくても成果を出せる仕組みを作り、みんなが幸せになれるようになりたいですね。