第52回 地方の中小企業こそ、エース社員を採用担当やリクルーターに。

学生の入社動機の一つに「○○さんと一緒に働きたいから」というものがあります。学生に一緒に働きたいと思ってもらえる自慢の先輩社員をリクルーターや採用担当に抜擢することが、景気回復、売り手市場、就活後ろ倒し…など様々な採用キーワードに溢れる現在の新卒採用を成功させるポイントだと考えます。

ある程度名の知れた企業なら、どんな採用担当者でも社名や福利厚生で選んでもらえます。社名や福利厚生で勝負できない企業は、人の魅力で訴えるしかありません。学生に「地元にも輝いている人がいるんだ」「だったら別に地元を離れなくてもいいや」「憧れの表参道ヒルズじゃなくても、○○さんみたいに生まれ育った地元でイキイキと働くのもいいかも!」と思わせるためにも、エース社員を学生の目に触れさせる機会を作ってください。

エース社員を採用担当に抜擢しようとすると部門長が嫌がるから無理だ、というケースもあるかもしれません。確かに大手企業なら、会社全体より自部署の成績が大切なので優秀な部下を取られたくないという気持ちが働き、交渉が難航することもあるかもしれません。

しかし、中小企業であれば、「自部署だけ良くても仕方がない。会社の発展に繋がるのであれば」と会社全体を考えている方も多いと思いますし、そもそもセクショナリズムも弱かったりして、理解もしてもらいやすいと思います。「そこまで余裕が無い」という企業様も会社説明会のときだけ参加するなどのピンポイント登板でも構いませんので協力を依頼してみてください。

そういった憧れの対象となる先輩社員は、入社後のマネジメントもやりやすくなります。憧れの人の言うことなら、何でも素直に聞けますし、細々したことを言わなくても憧れの先輩に近づけるよう自分で勝手に努力をします。「仕事は見て盗め」は今の若者には通用しないと言われて久しいですが、憧れの先輩の行動なら勝手に見て盗みます。先輩はドラッカーのマネジメント論やMBAのリーダーシップ論を学ぶ前に、憧れられる存在になるほうが遥かに大切です。

憧れられる先輩であり続けるために、先輩は常に自分を磨き続け、後輩はそんな先輩に追いつこうと努力し続ける。そして、組織全体のレベルが底上げされる。こうなれば理想的ですね。採用も教育も憧れられる社員が行うのが成功の近道です。