第61回 あの子が欲しい


あの子が欲しい 朝比奈 あすか

採用担当者の視点で就職活動をリアルに描いた新しい就活小説。ネットを駆使した採用活動の虚々実々の駆け引きを見事に描いています。

アラフォーの女性主人公・川俣志帆子の勤務先は、新興IT企業クレイズ・ドットコム。学生からネットに“ブラック企業”と書き込まれ悪評が広まっている中、新卒採用のプロジェクトリーダーに任命されたのが主人公の志帆子。志帆子はこのような逆境の中でも、優秀な学生を集めるために次々と有効な手を打っていきます。

凡人であれば心が折れそうなネットの書き込みを見ても、「こちらも学生を平気で駒扱いしている」「組織対個人である以上、組織側が優位に立っているのだから、何を書かれても鷹揚に構えていなければ」と考える冷静さと冷徹さを兼ね備え、淡々と業務を遂行していきます。

今まで就職活動をテーマに書かれた小説は何冊か読みましたが、採用担当者側の視点で書かれた本は初めてで新鮮でした。ネットでスグに悪評が広まる近年の採用活動の難しさ、採用担当者の苦悩がリアルに描かれ、その中でどうネットや悪評と向き合い優秀な学生を確保するかが細かく描かれ、とても参考になる一冊でした。

採用活動に携わっている方なら、感情移入しながら楽しく読めると思います。休日の息抜きに、今後の採用活動のヒントにぜひ。