第93回 「中小企業は人で惹きつけろ」の弊害。

「中小企業は規模や待遇では大手企業には勝てないから、人で惹きつけましょう」。採用担当者様なら、一度は聞いたことのある言葉ではないでしょうか。私たちも何度も伝えていることです。

しかしこの言葉だけを信じ、人だけで大企業と勝負してしまい、大敗を喫している企業様も多くいらっしゃいます。特に、履歴書やエントリーシート(以下ES)が期日までに届かなかったり、前日や当日に1次面接のキャンセルがあったり、内定を出しても簡単に辞退されたりするケースが目立っています。その大きな理由は、志望動機が言語化できないからです。学校指定の履歴書やESに志望動機欄がある場合、学生にとっては、まず書類提出が大きな難関になります。

会社説明会では、見栄えの良い若手社員やエース社員を登場させ、見事なプレゼンテーションを展開したり、優しくフレンドリーに接したりして、その場では学生の心を惹きつけることに成功したとしても、いざ志望動機を書くときに、人だけの魅力を伝えていては、「で、この会社は何が強みだったっけ?」「どうやって儲けているんだっけ?」となり、志望動機が言語化できず、書類提出を断念する学生が続出しています。

これは、16卒から始まった就活解禁3ヶ月繰り下げが起因しています。就活が短期化されたことにより、ESの提出時期が集中するようになり、提出できる企業に限りが出てきました。そんな大変なES作成の中でも一番時間がかかるのが志望動機です。よって、心から受けたいと思える(志望動機を言語化できる)企業にしか物理的に提出できないという現状に陥っています。履歴書やESに志望動機欄が無いケースでは、比較的提出率は高めですが、それでもいざ面接となった際、志望動機を作れずにキャンセルをするケースも増えています。

また、「うちは志望動機は聞かないと宣言している」という企業様でも、内定後、親や先生から「どんな会社から内定をもらったのか」は聞かれます。そのときに「まぁ人が良かったから」などと曖昧なことしか答えられず、結局反対されて辞退するケースもあります。

それらを防ぐためには、きちっと志望動機が作れるように、まず競争優位性やコアコンピタンス、将来ビジョン、大企業には無い魅力などを明確に伝え、そのうえで人の魅力を伝えることが重要です。もっと言えば、「志望動機を一緒に作る会社説明会」や、「志望動機まで完成させる個別相談会」などを開くのも面白いと思います。